症状のある箇所に直接鍼を刺さないのが、トーリの基本です。
「肩が痛いのに、肩には鍼をしないんですね」
「お腹に刺すんですか?腰痛なんですけど」など、
驚かれることがすくなくありません。
なぜ、トーリでは局所(症状のある部位)に直接施術しないのでしょうか?
【理由1】痛みを感じている箇所と問題のある箇所が異なる場合が多い。
例:外回りの営業の男性が、右の腰〜下肢が痛く、足を引きずりながら歩くことが多いと訴えて来院されましたが、よく見ていくと、問題は左半身にあることがわかり、ご本人も驚いていました。
【理由2】局所治療ではポイントを外す場合が多く、患者様に不安と不信感を与えてしまう。
例:他院で長く肩痛の治療をしているが改善が見られないため来院した患者様の肩をみると、鍼による皮下出血で真っ青でした。そこで、ふくらはぎに鍼を1本刺して、肩を回す体操をしてもらいました。すると、すぐに痛みが取れ、腕も上がるようになりました。
【理由3】局所に注目しすぎると、「患者様の全体」が見えなくなる。
例:慢性的な便秘に悩む女性は、長いこと腹部中心の鍼を受けてきたものの、あまり効果がなかったようでした。そこで、その方の職業と生活習慣を考慮し、頚や肩を楽にする鍼をしたところ、数分後トイレに行きたいと申し出られ、急いで鍼を抜いたことがあります。
【理由4】多くの患者様を施術してきて、重要な経穴(ツボ)のある手足(肘、膝から先)への刺針が最も効果的です。経絡理論が確信となる瞬間です。
例:ぎっくり腰で両脇を支えられながら来院した男性は、施術用のベッドにうつ伏せになるのさえ耐えられないご様子でした。急いで、手首と足首の近くに計4本の鍼を刺したら、すぐに効果が現れ、自立して歩いてお帰りになりました。
一見関係なさそうな経穴(ツボ)に鍼を刺して効果が現れるのが鍼の醍醐味です。その一部をご紹介します。
1)首の痛みには、手首・足首周辺の経穴
Mさんは、首が回らなくなってご来院。痛みがひどく、振り向くことができず、ベッドから起き上がるのもほんとうに大変な様子。吐き気をともなっていました。
例によって、首に直接鍼はせず、手足の経穴を中心に施術をしましたが、特に効果があったのは、手首・足首近くの経穴でした。
2)足首の捻挫の治療には、手首の経穴
ふくらはぎに鍼をした後、手首に鍼を刺して、痛む足首をかばうことなく、しっかり踏みしめながら歩いてもらいます。この方法で、劇的に痛みが改善し、軽々と階段でお帰りになる例をたくさん見ています。
3)膝の痛みには、肘の経穴
嘘みたいに思われるかも知れませんが、膝痛には、肘の経穴への刺針がとても効果の出る治療法となっています。
4)上下・左右交差した形の治療法
右の肩こりは、左ふくらはぎの経穴で (and vice versa)というように、上下・左右交差した形の治療法です。
重症の肩こりなどに用いています。
5)鼻水・鼻づまりには、ふくらはぎの経穴
鼻の症状には、鼻周囲や頭部の経穴もよく使いますが、遠く離れたふくらはぎの経穴が特に有効です。